日本睡眠歯科学会からの声明


日本睡眠歯科学会からの声明  日本睡眠歯科学会からの声明の補足資料

 

声明:治療効果ならびに装着状況が確認された口腔内装置は社会の安全を守ります

2017年12月23日
特定非営利活動法人 日本睡眠歯科学会
理事長 外木 守雄

                      

 平成26年6月1日に改正道路交通法が施行されました。自動車の運転に支障を及ぼす免許の拒否ないしは取り消し等の事由となる疾患のうちに、「重度の眠気の症状を呈する睡眠障害」があり、その中に閉塞性睡眠時無呼吸症(obstructive sleep apnea、以下OSA)も含まれております1
 OSAは、睡眠中に呼吸が弱くなる(低呼吸)、あるいは呼吸が停止する(無呼吸)ことが繰り返し生じることによって酸素の取り込みが悪くなり、睡眠が障害され、昼間の強い眠気や、集中力が低下するなどの症状を呈する病気です2,3。OSA があると、運転中に眠気が生じ、交通事故につながりやすいことが多くの研究で明らかになっています4,5
 OSAの治療法には、手術による治療、マスクを装着する経鼻的持続陽圧呼吸(continuous positive airway pressure、以下CPAP)治療、マウスピースを装着する口腔内装置(oral appliance、以下OA)治療があります6。この度、日本睡眠歯科学会では、治療効果ならびに装着状況が確認された口腔内装置は社会の安全を守ることに繋がることを提言します。以下にその理由を簡単に説明します。

1.口腔内装置治療は全てのOSA患者が選択できます

 OSAの治療法には、手術治療、CPAP治療、OA治療があることは前述の通りです。手術は、侵襲的な治療ですので全ての患者が希望する治療ではありません。CPAP治療は、保険制度上、OSAの程度が中等症〜重症の患者にのみ適応となり6、全ての患者に使える治療法ではありません。一方、OA治療は、軽症〜中等症、またはCPAP治療が使用できなかった患者に適応とされており7、保険制度上の制限はなく、全てのOSA患者が選択することが可能です。つまり、CPAP治療が使えない軽症患者に対しても、OA治療を選択することができます。

2.日中の眠気の強さとOSAの重症度は相関しません

 OSAの症状に日中の強い眠気があり、運転に支障をきたす可能性があるのは、前述の通りです。この日中の眠気とOSAの重症度は相関しないことが研究で明らかになっています8。つまり、重度の患者であっても眠気を感じない人もいますし、逆に、軽症の患者でも強い眠気を感じる方がいらっしゃいます。CPAP治療が使えない軽症の患者であっても、運転中に強い眠気を感じる可能性があるということです。眠気という観点からは、軽症の無呼吸であっても治療をする必要性があり、軽症の方でも用いることができるOAの治療意義があると言えます。

3.OAは持ち運びが簡単です

 OAは、非常にコンパクトで携帯性に優れており9、外泊時であっても使用は容易です。自動車を運転する状況としては、旅行時の運転や、または職業ドライバーの方が外泊しながら運転することも想定されます。このような外泊する状況であっても、携帯性の優れたOAは使用継続が容易です。

4.治療効果ならびに装着状況が確認された口腔内装置は社会の安全を守ります

 これらの理由から、OA治療がOSAに対して有効10ですが、OA治療を受ける際には、終夜睡眠ポリソムノグラフ検査などで治療効果を確認することが重要になります。また、装着することにより初めて効果を発揮しますので、継続してOAを装着する必要があり、歯科医院にて装着状況を管理してもらうことが大切です。このような適切な管理下でのOA治療により、運転者が自動車事故を起こすことを防止するだけでなく、交通事故自体を防止することで被害者を減らすことができ、社会の安全を守ることにつながります。これは、鉄道、航空等、公共交通機関の運転業務に携わる方にも言えることで、安全管理にとっても重要なことです。

引用文献
1. 道路交通法施行令 第33条の2の3
2. Young T, Palta M, Dempsey J, Skatrud J, Weber S, Badr S. The occurrence of sleep-disordered breathing among middle-aged adults. N Engl J Med 1993;328(17):1230e5.
3. Flemons WW. Clinical practice. Obstructive sleep apnea. N Engl J Med 2002;347(7):498e504.
4. Young T, Blustein J, Finn L, et al. Sleep-disordered breathing and motor vehicle accidents in a population-based sample of employed adults. Sleep. 1997 Aug;20(8):608-13.
5. Howard ME, Desai AV, Grunstein RR, et al. Sleepiness, sleep- disordered breathing, and accident risk factors in commercial vehicle drivers. Am J Respir Crit Care Med 2004;170:1014–21.
6. 榊原博樹(編集):睡眠時無呼吸症候群診療ハンドブック. 医学書院,2010. 7. Kushida CA, Morgenthaler TI, Littner MR, et al. Practice parameters for the treatment of snoring and Obstructive Sleep Apnea with oral appliances: an update for 2005. Sleep. 2006 Feb;29(2):240-3.
8. Tanaka S, Shima M. Assessment of screening tests for sleep apnea syndrome in the workplace. J Occup Health. 2010;52(2):99-105.
9. Mohammadieh A, Sutherland K, Cistulli PA. Sleep disordered breathing: management update. Intern Med J. 2017 Nov;47(11):1241-1247.
10. 日本睡眠歯科学会.閉塞性睡眠時無呼吸症に対する口腔内装置に関する診療ガイドライン(2017 年改訂版)
http://jadsm.jp/iryo/guideline_pdf/guideline_2017.pdf

作成工程
2017年11月3日
日本睡眠歯科学会 理事評議委員会・総会において、道路交通法対策声明のワーキンググループ(WG)発足。WG長:奥野健太郎(評議員)、WG委員:田賀 仁(評議員)、古畑升(理事)。
2017年12月6日
道路交通法対策声明WGにて作成した声明文の案を、日本睡眠歯科学会の理事へ提出。意見を収集し、声明文の内容を修正した。
2017年12月15日
修正を重ねた声明文が、日本睡眠歯科学会の理事内で承認が得られたため、完成とした。